ドイツ大使への暴言事件 バトゥミ(Batumi)で外交摩擦に発展
5月18日、ジョージアのバトゥミ(Batumi)市で、「ジョージアの夢(Georgian Dream)」政権支持者とみられる男性がドイツ駐ジョージア大使ペーター・フィッシャー氏に対し暴言を浴びせた。ドイツ大使館が情報を公式確認したほか、政府系メディアPOSTVが無修正の暴言動画を公開。事件は外交問題へと発展している。
現場の状況と大使館の反応
大使館の声明によると、現場に居合わせた複数の市民が大使を支援し、暴言を吐いた男性コチアシビリ(Kochiashvili)氏に対し抗議。同氏は直ちにその場を立ち去ったが、警察は到着していなかったという。暴行容疑者の男性はTikTokとFacebookに動画を投稿し、ロシア語で大使を「ポソル(大使)」と呼びながら「ジョージアに入国させるべきではない」「餓死させるべきだ」との暴言を繰り返した事実を再現していた。
野党の反発と与党の沈黙
野党指導者らは事件を強く非難。「国家戦略構築党」のギオルギ・ヴァシャゼ(Giorgi Vashadze)党首はFacebookで「恥ずべき反国家的行為」と断じ、ロシア風の反欧米プロパガンダが事件を誘発したと指摘した。「レロ党」のマムカ・ハザラゼ(Mamuka Khazaradze)党首も声明で「国家の恥であり犯罪行為」と非難し、政府の反欧州リトリックが背景にあると批判した。
与党「ジョージアの夢」の対外攻勢強まる
フィッシャー大使は最近、与党から激しい批判の対象となっている。議会議長シャルヴァ・パプアシヴィリ(Shalva Papuashvili)氏は5月20日、Facebookで大使を「ソ連的思考」と攻撃。同氏は特に、フィッシャー大使がバトゥミのジャーナリスト裁判を傍聴し「自由を求めるミジア(Mzia Amaglobeli)氏」とのインタビューを行ったことを問題視した。
裁判傍聴をめぐる攻防
パプアシヴィリ議長は「大使はジョージア語を理解せず、判事への圧力となっている」と主張。これに対し現地メディア「バトゥメレビ(Batumelebi)」は、フィンランドとエストニアの大使も同席し、通訳サービスが提供されていたと反論した。同メディアは「全てのインタビューで『自由を求めるミジア』の看板を使用している」と説明し、政権の批判は不当と訴えている。
反欧州リトリックの背景
与党幹部ザザ・シャティリシヴィリ(Zaza Shatirishvili)氏は先月、外交使節団の活動制限を求める提言を発表。これを受け、イラクリ・コバヒゼ(Irakli Kobakhidze)首相代行らはウィーン条約を盾に「大使館の越権行為」を非難する戦術を強化している。プロ政権メディアも協調し、フィッシャー大使が野党活動家に「指示」を与えているとする映像を流すなど、官民一体のキャンペーンが続いている。
2012年から政権を維持する「ジョージアの夢」は近年、欧州統合路線を標榜しながらも、ロシアとの関係改善を模索する二重外交が特徴。今回の事件は、国内で深まる欧米との溝を象徴する事例として国際的な注目を集めている。
メディアソース: civil.ge