ジョージア人気コメディアン ヴァソ・プハカゼが政治関連で尋問を受ける
人気コメディアンに捜査のメス
ジョージア(グルジア)を代表するコメディアンヴァソ・プハカゼ(Vaso Pukhasze)が7月15日、首都トビリシ(Tbilisi)の検察庁で政治関連の容疑で尋問を受けた。プハカゼ氏は近年、政府批判の風刺ネタを積極的に取り入れており、当局との緊張関係が指摘されていた。
捜査の背景と容疑内容
捜査当局によると、プハカゼ氏は「公の秩序を乱す目的での虚偽情報拡散」の疑いで事情聴取を受けた。具体的には、2023年の地方選挙期間中にSNSで共有した風刺動画が、現職のサロメ・ズラビシュヴィリ大統領を誹謗する内容を含んでいたとされる。
ジョージア刑法第259条では「虚偽情報の意図的拡散」に対し、最大3年の禁固刑が規定されている。同法は2021年に改正され、政府批判派からは「言論弾圧の道具」との批判が上がっている。
芸術界から抗議の声
事件を受け、ジョージア演劇協会は「表現の自由への攻撃」とする声明を発表。トビリシ国立劇場のアナ・カラゼ(Ana Kharaze)芸術監督は「風刺は民主主義社会の健全な批判手段」と述べ、捜査の中止を求めた。
日本との関係では、プハカゼ氏が2019年に東京で開催された「ジョージア文化週間」に参加した経緯がある。当時の公演では、伝統的風刺劇と現代的な政治批評を融合させたパフォーマンスが注目を集めた。
政治と芸術の緊張関係
現政権与党「ジョージアの夢」は近年、ロシア寄りの政策を強めており、EU加盟を目指す野党勢力との対立が先鋭化。文化人による政権批判が相次ぐ中、今回の捜査は芸術表現の自由をめぐる新たな火種となった。
捜査費用に関して検察側は「1万ラリ(約52万円)の予算を計上」と説明しているが、野党系メディアは「国民の税金を使った嫌がらせ」と反発。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も監視を強化する構えだ。
今後の展開と影響
プハカゼ氏は尋問後、記者団に「笑いが武器になる社会こそ健全だ」とコメント。支持者らが検察庁前で抗議集会を開くなど、市民の関心は高まっている。次回公演となる8月のトビリシ国際コメディフェスティバルでは、本件を題材にした新作が披露される可能性が取りざたされている。
ジョージアでは2024年10月に総選挙を控えており、文化人を巻き込んだ言論をめぐる攻防が政治情勢に与える影響が注目される。日本を含む国際社会の反応も、今後の捜査方針を左右する要因となりそうだ。
メディアソース: geinfojp.wordpress.com