ロシアが占領下アブハジアに直行便開始 ジョージア政府が国際法違反を非難
ロシアのアブハジア直行便開始とジョージアの非難
ロシアが5月1日、国際社会の大多数がジョージアの一部と認めるアブハジア(Abkhazia)地方のソフミ(Sokhumi)空港へ直行便の運航を開始したことを受け、ジョージア政府は国際法違反だと強く抗議した。ロシア国営通信リア・ノーボスチによれば、UVT Aero航空は当初3日に予定されていたモスクワ・ヴヌーコヴォ空港発の初便を「需要の高まり」を理由に2日前倒しで運航した。
ジョージア政府の反応
ジョージア政府のレヴァン・ダヴィタシヴィリ(Levan Davitashvili)副首相兼経済・持続可能開発大臣は、国際民間航空機関(ICAO)の基準を引用し「占領地域の空港運用は国際規範とジョージア占領法(2008年制定)に違反する」と非難。当局による安全基準の査察が行えない状況下での運航は「航空安全を脅かす」と指摘した。
さらに、iFly航空とNordStar航空もモスクワ・クラスノヤルスク発の定期便を計画中と伝えられている。これら3社は2022年のウクライナ侵攻後、西側諸国から制裁対象に指定されている。
国際社会の反応
ジョージア民間航空庁の声明
ジョージア民間航空庁は「ソフミ空港は国際基準を満たさず、ジョージア政府の許可がない国際線運航は国際法違反」と改めて強調。ICAOに違反状況を公式通報したことを明らかにした。同庁は192カ国が加盟するシカゴ条約(国際民間航空条約)に基づく対応を継続する方針を示している。
欧州連合(EU)の懸念表明
EU外務当局は5月3日、ロシアの行動を「ジョージアの主権侵害」と非難する声明を発表。「ジョージア政府の同意なく、航空安全基準を満たさない空港を利用する行為は容認できない」と批判し、ジョージアの領土保全支持を再確認した。
歴史的背景と地域情勢
ロシアは2023年6月から鉄道接続(ソチ-ガグラ間)を拡大するなど、同地域での影響力強化を進めてきた。ジョージア政府はこれらを「実効支配の強化策」と位置づけ、国際社会に警戒を呼びかけている。
アブハジア地方は冷戦後の1990年代からジョージアからの事実上の分離状態が続き、2008年の南オセチア紛争を機にロシアが軍事介入。現在までにロシア・ニカラグア・シリア・ベネズエラの4カ国しか「独立」を承認していない。日本政府は一貫してジョージアの領土保全を支持している。
主要データ:
- ソフミ空港:旧ソ連邦崩壊後32年間国際線未使用
- 直行便運賃:モスクワ-ソフミ間片道約22,000ルーブル(約39,000円)
- ジョージアGDPの3.4%:ロシア・アブハジア「国境」管理による経済損失(2023年推定)
メディアソース: civil.ge