NATO年次報告2024 ジョージアの政治的統合進展に懸念 ブカレスト誓約言及せず

NATO年次報告で浮き彫りになったジョージアの現状

NATOのイェンス・ストルテンベルグ（Jens Stoltenberg）事務総長が2024年4月24日に公表した年次報告書で、ジョージア（Sakartvelo）に関する政治的な進展に関する言及が顕著に欠落していることが明らかになりました。報告書では実務レベルでの協力関係は評価されているものの、2008年のブカレスト（București）首脳会議で合意された「ジョージアのNATO加盟」に関する文言が完全に排除されました。

消えたブカレスト誓約

2022年の報告書では「ブカレスト・サミットとマドリッド・サミットの決定に基づき、ジョージアの加盟を支持する」と明記されていましたが、今回初めてこの文言が削除されました。代わりに、ポーランドでの合同演習「CWIX24」や海上監視作戦「シーガーディアン」への参加など、防衛能力の実践的向上に焦点が当てられています。

南コーカサス地域への関与

NATOはジョージアを南コーカサス地域における重要なパートナーと位置付け、主権と領土保全への支持を再確認。特に透明性向上イニシアチブ（BI）を通じた防衛分野のガバナンス強化を評価しています。しかし、加盟候補国（Aspirant Country）としてのステータスへの言及はなく、「開かれた扉」政策に関する記述からも外れています。

資金援助の実態と課題

2014年のウェールズ・サミット以降、NATOはジョージアを含むパートナー国に総額8,800万ユーロ（約46億円）を支援。この資金は各国の防衛ニーズに応じた長期的な能力構築を目的とし、ジョージアでは軍の近代化やサイバー防衛力強化に活用されました。ただし地域専門家からは「財政支援が政治プロセスの代替となっている」との批判の声も上がっています。

国際連携の矛盾点

NATOは欧州大西洋パートナーシップ理事会（EAPC）や「平和のためのパートナーシップ（PfP）」を通じた協力を継続。その一方で、2023年の「最親密パートナー」という評価が今回は削除され、代わりに「構造的二国間関係」という表現に変化しました。日本との関係では、黒海航路の安全保障が経済連携の観点から注目を集める可能性があります。

国内政治との連動性

ジョージア政府のEU加盟申請と並行するNATO統合プロセスが停滞している現状に対し、野党勢力からは「ロシア寄りの政策が影響している」との指摘が続出。NATO広報官は「加盟基準の達成が最優先」としながらも、アブハジア（Abkhazia）・南オセチア（South Ossetia）問題の未解決が障壁になっていると暗に示唆しています。

地政学リスクが高まる中、欧州リベラル・フォーラムのアナリストは「NATOの消極姿勢が地域のパワーバランスを変化させる」と警鐘を鳴らしています。日本政府も黒海地域の安定がエネルギー安定供給に直結するとして、間接的な支援を継続する方針です。

メディアソース: geinfojp.wordpress.com